Brian Douglas Wilson、Brian Wilson(以下、ブライアン・ウィルソン)がアメリカ現地時間2025年6月11日に亡くなった。82歳だった。バンド「The Beach Boys」(以下、 ビーチ・ボーイズ)のベース、ボーカルだった彼はどちらかというとコンポーザーというかソングライターとしての評価が高い。この偉大すぎるアーティストはこれまでかなり多くの方が解説や紹介をしているので、今更私が説明することでもないし多分短慮な話でつまらない。ということで簡潔に自分とブライアン・ウィルソンの話としてみたい。
もともと古めかしくアメリカンなロックサウンドが好きだった私は友人の薦めでアルバム「Surfin' Safari」を聞いてみた。それは20歳位のときだった。もちろん「Surfin USA」を知っていたけど、「Surfin' Safari」も含めてそれ以外は何となく聞いたようなくらいな印象だった。初めて聞いた「Surfin' Safari」はどこか古めかしくチープな感じもしたが、嫌いじゃなかった。それなりかなぁという感想だったが、そのときの友人のひとことはその後の音楽的嗜好の大きなターニングポイントとなった。
「ビーチ・ボーイズはコーラス隊なんだ」
自分のイメージは当時のチャラい連中が、サーフィンや車をバンドサウンドでキャーキャーいわせてる構図だった。しかし、後に知ったことは彼らは全く異なる心情でバンド活動をおこなっていたようだ。とにかく友人のひとことが稚拙な私の耳に革命を起こした。確かにそうやって聞くとめちゃくちゃ興味深いサウンドだった。無理矢理バンドサウンドを奏でるコーラス隊という感じ。実際にそうだったりなかったりと言われているが、とにかくコーラスが素晴らしい。↓こちらのYouTubeは「Surfin' Safari」のショート動画。
さて、そこから片っ端からアルバムをとにかく聞きまくった。おそらくオフィシャルなオリジナルアルバムは全て聞いたと思う。まずたどり着いたのはもちろん「Pet Sounds」。誰もが知る金字塔的アルバム。この名作に針を落としながら、ビーチ・ボーイズ関連書籍の多くに目を通した。そのとき知ったのがビーチ・ボーイズの影の部分とブライアン・ウィルソンの苦悩だった。スター時代の悲劇やドラッグやデニスの死なども過去の話であったため、自分の中でリアリティに欠けていた部分はあったかも知れない。しかし、「天才ブライアン・ウィルソン」という言葉はより闇の部分を深めただけではないか、と若い私なりに解釈しながら多くの作品に耳を通した。そして幸運にもあの作品のリリースに間に合った。
幻といわれた作品「Smile」である。当時その界隈で騒がれたことを記憶しているが、自分もその波に乗って購入した。が、あまり作品的には印象がない。当時を知る人たちからすれば待ちに待った「幻」というワクワクが堪らなかっただろうが、自分にはそれが無かった。とはいえ聞けて良かった。
さて、タイトルに「自分とブライアン・ウィルソン」なんて付けておきながら大して触れていないから最後に少し。私の中ではブライアン・ウィルソンはおじいちゃんだ。しかし、若い頃のサウンドは多く残っており、たくさんのグッドメロディが時代を超えている。そして自分にとって「好みのバンドサウンド」の原点を教えてくれた。コーラスを重視したバンド、RamonesやHi-STANDARDがかなり好きなのも確実にビーチ・ボーイズサウンドが影響している。PiGGiESだってThe Wimpy'sだってコーラスは重要だ。自分にとってブライアン・ウィルソンはバンドの始祖なのかも知れない。
今回の話はこのあたりで。神秘的なメロディで時代を感じさせない天才の名曲「Good Vibrations」を最後に。本当に名曲をありがとうございました。苦労や悩みも多かっただろうしゆっくりしてもらいたい。これからも聞き続けるだろうと思いながらご一聴。