この音源のバックグラウンドを知ると、さらに痺れる。「事前準備なし、1時間以内に耳コピから録音までを完結させる」という彼の人気企画「The Song Society」から生まれたセッション。のちに『The Song Society Playlist』(2018年)にも収められるこのトラックは、即興という極限状態の中で削り出された、純粋な音楽の結晶と言っていい。
一方で、独特の空気感で魅了するBase Ball Bear(ACOUSTIC SET)、天才ピアニストによるPIANO baSH performed by 清塚信也、そしてストレイテナー村松拓と9mm Parabellum Bullet菅原卓郎による限定ユニット卓&拓 SESSION2026や、上江洌.清作&The BK Sounds!!といった、フェスならではの贅沢でプレミアムな音空間も見逃せない。
3. 圧倒的なライブパフォーマンスと胸を打つ言葉たち
ストレートな言葉とメロディで胸を締め付けるMy Hair is Bad、圧巻のライブパフォーマンスで心を掴むハルカミライ、FUNKY MONKEY BBY'S。さらには、コミックバンドの枠を超えたエンターテインメントの真骨頂を見せる四星球やバックドロップシンデレラが、爆笑と感動を同時に巻き起こしてくれるはずだ。
前置きが長くなったが、私にとっての夏休みが終わりを告げた今日、8月16日。過去にリリースされたCDを調べてみると、2002年のとある楽曲にたどり着いた。Every Little Thing(以下、ELT)の21枚目のシングル『ささやかな祈り』。デビューが1996年だから、実にハイペースなリリースだ。2002年頃には世間の「流行り」としては落ち着いていただろうが、CDシングル最盛期の熱量とELTの勢いが相まった結果が、この凄まじいリリース密度だったのだと思う。
しかし、その巨大な二軸の「中間」に位置し、日常のすき間に滑り込むように時代を席巻した存在こそが、女性ボーカルを擁するプロデュースユニットたちだった。中でも、その先駆けとして異質な存在感を放っていたのがMy Little Lover(マイラバ)だ。
My Little Loverの静かなる支配
1995年、『Hello, Again 〜昔からある場所〜』が流れた瞬間の空気の変わりようを覚えているだろうか。安室奈美恵のような手の届かないカリスマでもなく、ミスチルのような青く熱いドラマ性でもない。小林武史の手がける緻密で洗練されたポップサウンドに乗せて、akkoが歌い上げるあの透明でどこか無機質なボーカル。それは過剰な自己主張をせず、しかし圧倒的なポップネスを持って、日常の風景を静かに塗り替えていった。CDショップの店頭だけでなく、街角のラジオ、コンビニのUSEN、Driveの車内——どこへ行ってもマイラバが鳴っていた。派手なパフォーマンスで煽るのではない。ただそこに「存在する」だけで、時代全体のBGMを独占してしまうような静かなる凄み。あれこそがマイラバの持っていた狂気的なまでの浸透力だった。
「脱力」と「過密」の間をつないだPUFFYの存在
このマイラバやELTが構築した「日常に溶け込むポップス」と、カリスマたちの「非日常の熱量」の中間地点において、極めて異彩を放っていたのがPUFFYではないだろうか。奥田民生プロデュースのもと、『アジアの純真』で鮮烈にデビューした彼女たちは、徹底的な「自然体」と「脱力」を武器にしていた。頑張らない、張り切らない、だけど抜群にキャッチー。安室奈美恵を目指すにはストイックさが足りず、ミスチルを聴くには少し肩の力を抜きたい——そんな広大な音楽的空白地帯に、PUFFYの脱力感が見事にはまった。マイラバが提示した「洗練された日常」と、PUFFYが提示した「等身大のゆるさ」。この2つのラインがあったからこそ、後のELTやDo As Infinityといったユニットが、よりドラマチックに、よりロックに時代の真ん中を打ち抜く下地が完成したのではないか。
Do As Infinityが継承した熱量
2000年代初頭へ向かう中で、Do As Infinityはそのバトンを受け取り、よりロックテイストを前面に出して駆け上がった。伴都美子のパワフルな歌声と哀愁を帯びたメロディは、深夜番組やアニメのタイアップと共に若者の感情を激しく揺さぶった。ELTが描く繊細な心情とは対照的に、胸を掻きむしるような衝動を叩きつける彼女たちのスタイルもまた、あの時代の最大瞬間風速の一角を担っていた。
さらに、SNSのタイムラインを賑わせる最新ヒット曲の導入スピードも過去最高レベル。センバツの行進曲として話題を呼んだM!LKの『イイじゃん』をはじめ、近年のJ-POPシーンを疾走するMrs. GREEN APPLEやYOASOBIのナンバーが、華やかなダンスとともにアルプスを彩っている。若者たちの「今聴きたい音」と「TikTok的なキャッチーなノリ」がブラスバンドアレンジによって増幅され、スタンドと観客席をひとつに繋ぐ強力なアンセムとなっている。