11月3日、文化の日。1946年のこの日に日本国憲法が公布され、「自由と平和を愛し、文化をすすめる」という趣旨で制定された祝日だ。ちなみに11月3日は明治天皇の誕生日(明治節)でもあり、時代を超えて節目の日でもある。
……なんて堅苦しい解説はここまでにして。「文化」といえば、Culture(カルチャー)。音楽好きとして「カルチャー」と聞いて真っ先に頭に浮かぶのは、やっぱりカルチャー・クラブ(Culture Club)だ。そしてカルチャー・クラブといえば、あの曲。『Karma Chameleon(カーマは気まぐれ)』(1983年)。
……いや、正直に白状しよう。今、私の頭の中で鳴っているあのイントロとサビは、先日のキングオブコントのせいだ。
そう、見事王者に輝いたジェラードンのコント。西本さんが奇妙な動きでカマキリのマネをしながら、あのフレーズを口ずさんでいる、あの脳裏に焼き付いて離れないシュールな姿だ。
一度あれを見てしまうと、街やラジオで『Karma Chameleon』が流れるたびに、脳内で西本さんのカマキリ姿がチラついて仕方がないという素晴らしい(?)後遺症に悩まされている。
しかし、だ。大爆笑したあとにふと思って、久しぶりにこの曲をじっくり聴き直し、さらにオフィシャルMVまで見返してみたのだが……やっぱりこの曲、そして彼らはとんでもない魅力を放っているのだ。
川辺の風景と「赤、金、そして緑」に隠されたメッセージ
あらためてMVを観てみると、そこには19世紀のアメリカ開拓時代を思わせる、どこかノスタルジックな川辺の風景が広がっている。
川を行く船、ストローハットをかぶった人々、そして人種もジェンダーの枠をも軽々と飛び越えた群衆。ボーイ・ジョージの圧倒的な存在感を中心に、最後はみんなで楽しそうに行進していくあのピースフルなエンディング。観ているだけで、なぜか胸が熱くなる温かさがある。
そして歌詞の中に出てくる「Red, gold and green(赤、金、そして緑)」というフレーズ。これはレゲエの象徴(ラスタカラー)でもある色彩であり、多様な文化やルーツがごちゃ混ぜになったカルチャー・クラブというバンドのアイデンティティそのものを表しているようにも思える。
明るいモータウン・ビートに隠された「切なさ」
そんなノスタルジックでハッピーなMVと軽快なカントリー/モータウン調のビートの裏腹に、歌詞を追いかけてみると、実はなかなかにシリアスだ。
原題の「Karma(カルマ)」は、仏教やヒンドゥー教でいう「因果応報」「業」のこと。カメレオンのように周りに合わせて自分の色(本心)を変え、ウソをつき続けている相手に対して、ボーイ・ジョージは切なく語りかける。
"You're my lover, not my rival"
(君は僕の恋人だろう、ライバルなんかじゃない)
「自分に嘘をつき続けて態度をコロコロ変えていたら、いつかそのバチ(カルマ)が当たるよ」という、誠実になれない人間への切ない警告。
最高にキャッチーなメロディと陽気なMVの裏で、実はちょっぴりビターな人間模様が描かれている。このギャップこそが、80年代ポップスのたまらない魅力なのだ。
ビジュアルの衝撃と「文化」を塗り替えたボーイ・ジョージ
当時、妖艶なメイクとド派手な衣装で世界中を虜にしたボーイ・ジョージ。「男なのか女なのか」「アイドルなのか本格派シンガーなのか」という既存のカテゴリーを爽快にぶち壊していった。
アイルランド系、ユダヤ系、ジャマイカ系など、多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まったからこそ名付けられたバンド名=「カルチャー・クラブ」。性別も人種もジャンルも超えて、極上のポップ・ミュージックで世界を席巻した彼らの存在こそ、まさに80年代における最高にポップな「文化革命」だった。
お笑いから入る洋楽の楽しさ
お笑いコントの強烈なインパクトから始まって、ふと開いたYouTubeでMVのノスタルジックな風景に癒やされる。
シュールなカマキリのマネという、最高にくだらない(褒め言葉!)入り口から入ったって、音楽の深みへたどり着くルートとしては最高じゃないか。ジェラードンのおかげで、久しぶりにカルチャー・クラブのMVを観返し、アルバムを引っ張り出して聴く最高のきっかけになった。
文化の日の夜。今夜はカマキリの余韻と、MVの温かい風景に浸りつつ、ボーイ・ジョージのソウルフルで優しい歌声に耳を傾けたい。やっぱり、音楽もコントも、最高だ。では最後にご一聴。




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