中央アジアには面白い音楽がたくさん存在しているようだ。今回紹介するのはモンゴルのモンゴリアンハードロックバンド。まずはどんなバンドかご覧いただきたい。
「Uuhai」というバンドの「Khar Khulz」という曲。何だこれは?と思われた方もいらっしゃると思う。いわゆる馬頭琴、馬頭ヴァイオリンといわれる「モリンホール」や声が二重に聞こえる発声法「ホーミー」が響き渡る音楽だ。そんな「Uuhai」のメンバーを紹介しておきたい。
Ts. SARUUL(ボーカル、鉄鉱石、アコーディオン)、B. ZORIGOO(モリンホール 、ホーミー)、D. SHINETSOG-GENI(モリンホール、ホーミー)、D. BATBAYAR(パーカッション)D. OTGONBAATAR(ドラムス、作詞作曲、プロデュース)
彼らが奏でるのはロックでハードでヘヴィな音楽だ。そして、その中身は「モリンホール」、「ホーミー」を駆使し、モンゴルの伝統的な長唄「オルティンドー」を奏でている。これら3つの「モリンホール(morin khuur)」「ホーミー(khoomei)」「オルティンドー(urtyn duu)」はユネスコの文化遺産に指定されている。まさに「文化遺産バンド」と呼ぶことが出来る。
実はこのジャンルには「The HU」という第一人者的バンドが存在している。こちらのバンドをご存知の方は多いかも知れない。大ヒット曲「Wolf Totem」をどうぞ。
この曲は2019年4月のビルボード・ハードロック部門のチャートで1位を獲得した。モンゴルのバンドや音楽家がビルボード1位獲得したのは初めての快挙だった。こちらのバンドの主要メンバーも紹介しておきたい。
Ts. ガルバドラフ「ガラー」(モリンホール、ホーミー)、G. ニャムジャンツァン「ジャヤ」(口琴、ホーミー、ツォール)、B. エンフサイハン「エンクシュ」(モリンホール、ホーミー)、N. テムーレン「テムカ」(トブシュール、バックボーカル)
またツォールなんて聞いたことのない楽器が出てきた。これはモンゴル地域の木管楽器でいわゆる縦笛のような楽器だ。大変わかりやすい解説をしていただいているサイトがあるので引用させていただく。
トブシュールという楽器はトプシュールとも呼ぶらしいが、モンゴルの民族楽器でいわゆる二弦楽器だ。説明は同じく下記で。
説明は続くが口琴は以前Otykenというバンドのとき紹介したことがあるが、口にあてながらビヨンビヨン音を鳴らす楽器だ。こちらも引用させていただくと共にOtykenの記事もどうぞ。
続いては「Uuhai」の「Khun Sureg」という曲をご覧いただきたい。
カッコいいのだが、シリアスなのかコミカルなのかわからない。とにかくモンゴルの伝統と現代を結び付けるMVとなっている。どんどん見ていきたい。
ホーミーから始まるこの荘厳なサウンド「Uuhai」の「Ser Ser」。めちゃくちゃカッコいい。伝統音楽的要素をしっかりと詰め込みながら、きちんとヘヴィなサウンドに仕上げている。
さて、ここからのターンは「The HU」だ。
先程の「Wolf Totem」と同じころ、2018年秋頃に動画かアップされた「Yuve Yuve Yu」。この2曲ともハードロックシーンで話題となった。その後ヨーロッパや北アメリカツアーを行うなど、ワールドワイドに活躍している。続いてはMetallica(メタリカ)「Sad but True」のカバーをどうぞ。
Metallicaの重厚感を損なわずに彼らのサウンドもきちんと取り込んでいる。そんな彼らはモンゴル文化を世界に広めたという功績を讃えられて、チンギスハン勲章という最高クラスの勲章を国から与えられた。それほど彼らは自国でも英雄なのだ。
続いての楽曲は2023年の作品「Sell The World」。アニメーションのMVだが、少しショッキングな内容だ。しかし、現代を皮肉ったような内容とも言える。もちろん音は抜群でどちらかというとハードロック感を増したようだ。心してご覧いただきたい。
モンゴルといえば今は広大な草原をフィールドとしている遊牧民のイメージがあるが、かつては巨大な帝国があった。その規模は人類史上最も広大な範囲を支配下に収めた帝国のひとつとも言われている。モンゴル帝国が世界を席巻したのは800年も前の話だ。初代皇帝チンギス=ハンの末裔の彼らにも戦士の血が宿っていることだろう。その戦士としての誇りが生み出したサウンドはもう一度世界を獲ることが出来るか否か。どちらにせよ「The HU」「Uuhai」ともに最高にカッコいい蒼き狼たちであることには変わらない。最後はそんな蒼き狼「The HU」の「This Is Mongol」をご覧いただきたい。これがモンゴルだ!と言い放つ、彼らの叫びをご一聴。