音楽好きの今の話と昔の話

普段目についた音楽について何となく語ります。

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私的名盤考察「The Old Record」

SKA(以降はスカで表記)の歴史はなかなか古い。今回の話は、スカの歴史を語りたい訳ではないが、ほんの少しだけ流れを説明したい。スカの起源は諸説あるものの、一般的なルーツを辿ると1950年代のジャマイカに遡る。このスカという言葉はあのリズムから来ていると思われ、誰が言い始めたかは諸説ありすぎるのでここでは割愛させていただきたい。1960年頃にはThe Skatalitesの登場により、欧米へこのジャマイカの音楽は広まり、後のロックステディやレゲエなんかも生まれて来る。

 

 

そして1970年に入り2トーンスカが生まれて来る。これは社会的背景や人種的背景の側面もあった。代表的なイギリスのバンドThe Specialsは黒人と白人が入り混じり、日本でいうところの市松模様の白黒バージョンがこのジャンルの象徴的なモチーフとなった。このThe Specialsのおかげで、スカやロックステディに当時ロンドンで火の手が上がり始めたパンクの要素を織り交ぜた音楽が作られた。The Clashもレゲエやスカの要素を織り交ぜたりとスカとパンクが融合を始めたのもこの頃だ。

 

The Specials

The Specials

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そして3つ目のスカの歴史の大きな波の中にあるのが今回紹介したい1枚である。この3つ目の波というの1980年代後半から1990年代にかけてのいわゆるスカパンクスカコアの世界的流行だ。私はこのシーンの音楽が大好きで、お気に入りのバンドはOperation IvyやFishbone、Reel Big FishやSublimeLess Than Jakeなど挙げていけばキリがない。中でも特に好きなのはReel Big Fishだが今回はこのバンドではない。今回改めて聞き込んでみたいのはDANCE HALL CRASHERS(ダンスホールクラッシャーズ、以下DHC)のとある1枚。

 

 

DHCのアルバム「The Old Record」が今回是非とも紹介したい1枚だ。1993年にリリースされたアルバム「1989-1992」の1996年に再発された盤で1曲オリジナルより少ないが、今回はこの「The Old Record」で統一したい。

私のブログをご存知の方は、やたらツインボーカルバンドを推していることが分かると思う。その原因と呼ぶのか根源と言うのか、その理由は確実にこのバンドの影響だ。若かりし頃この1枚の衝撃が余りにも大きく、その後の音楽的嗜好に多大な影響を与えた。後の「Shelley」や「LOST AGAIN」などももちろんメロディックでポップな名曲である。それらが生まれる前夜までに構築されたこの名盤「The Old Record」を私的名盤として考察とは大それているが、紐解いていきたい。

まずはこのDHCについて。Operation Ivyのメンバーだった2人、現RancidのTim Armstrong、またベーシストMatt Freemanが中心となり、1989年カリフォルニアのバークレーで結成された、いわゆる「スカパンク」バンドだ。言わばこのバンドはOperation Ivyの弟分・支店というべきところから始まった。ロックステディの創始者ともいわれるAlton Ellisの「Dance Crasher」にちなんだバンド名でスタートした。当初はTimのボーカルで始まったが、メンバーの入替や解散を経て1990年頃落ち着いたメンバーがボーカルのKarina Deniké SchwarzとElyse Rogers、ギターのJason HammonとJaime McCormick、ドラムのGavin Hammon、ベースのJole WingのメンバーでMoon Ska Recordsから1990年にレコーディングを行ったもののその後すぐ解散してしまった。

その後1回限りの再結成を行ったりと安定しなかったが、1992年頃にはバンドとして活動することになった。1993年にバンドが再結成した記念にMoon Recordsからそれまでのバンドの作品を集めた「1989-1992」がリリースされた。1990年代中頃まで活躍が続き、1995年にMCA Recordsからアルバム「Lockjaw」をリリースした。こちらも前述の「Shelley」を含む名盤と呼び声高い。このアルバムはスカパンクの素晴らしい楽曲というだけではなく、pop punkの要素が多くちりばめられており、非常にポピュラーで聞きやすい1枚だ。その後もいくつかアルバムをリリースしたが2004年を最後にバンドとしての演奏を行っていない。ちなみに彼らは解散は宣言しておらず、2023年現在正確にはまだ活動中である。最近でもボーカルのKarina DenikéはNOFXのライブに参加したりと、インスタで近況を頻繁に公開してくれている。

 

 



このバンドの混沌とした時期である1990年頃レコーディングした曲を中心とした作品が「The Old Record」である。この名盤を紹介するにあたり曲目を紹介したい。

1.Othello

2.Nuisance

3.North Pole

4.He Wants Me Back

5.My Problem

6.Blind Leading The Blind

7.Pick Up Lines

8.Street Sweeper

9.State Of Mind

10.Keep On Running

11.Jave Junkie

12.Old And Grey

13.Babushska

14.Truth Hurts

15.Better Than Anything

16.Skinhead BBQ

17.Fight All Night

18.DHC

このアルバムはミックスされた時期がバラバラになっていたものを集めている時期は1-3曲目が1993年1月、4曲目が1991年4月、5-15曲目が1990年5月、16-18曲目が1989年12月となっている。メンバーの入れ替わりがある中で全て参加しているのはツインボーカルのひとりElyse RogersとギターのJason Hammonの2人のみ。この2人は最後にリリースされたアルバム「PURR」まで残っているのでオリジナルメンバーと言える。

 



さて、録音ミックスされた時期やメンバーが異なる一種のコンピレーションアルバムみたいな構成のアルバムである。しかしこのアルバムの面白いところは、その雰囲気を感じさせない1枚のオリジナルアルバムの様相を呈している。全体的な印象としてはレゲエ要素よりもジャズ的要素が強いホーン音が聞こえる。2トーンスカにスピードとポピュラーさを加味したような感じか。ややこしく言えばキリがないが、端的にいうなら普通すぎるが「ジャジーでポップなスカパンク」。スカパンクを聞くのであれば、このバンドのこのアルバムはぜひとも聞いていただきたい。昔ながらのスカの要素を十分に含みながら、のちのスカパンク、ガールズツインボーカルに多大な影響を残したと考えられる。

さて、具体的に内容に触れてみたい。再生をするとまず1曲目「Othello」のベース音イントロから始まる。とても印象的な音からスタートするこのアルバムは全体的に非常に音がクリアだ。バンドスタイルでもホーン隊がいるスカバンドはメンバーも多く、楽器も多いため何となく音が渋滞してしまう。その上にツインボーカルだが本来ガチャガチャした印象をもたらしてしまいがちだ。だがこの作品はその大所帯を感じさせないスマートな楽曲が詰め込まれている。。彼らの楽曲センスが抜群だろうし、エンジニアの腕が素晴らしいというのもあるだろうが、そのことは今聞いてすごく感じる。

6曲目の「Blind Leading The Blind」なんかは様々なジャンルの要素が含まれていると感じる。個人的にDHCらしいと感じる1曲だ。ギターの裏打ちとドラムリズムとのマッチングが実にカッコいい。間奏のギターソロも単純そうで様々なものをイメージさせるに十分なアレンジとなっている。これらの演奏にツインボーカルが実にリズミカルに絡み合う。勝手な想像だがジャイブ的だなと思えてしまう。

先程表現した「ジャジーなポップ」さは、「ジャイブ的」というか「ジターバグ的」という表現で表せると考える。これらの要素も含んだキャッチーなスカを演ってくれるのがこのDHC。音楽のジャンルわけ分析は必要ないと考えるタチなのでこの話はこのあたりにしたい。

このアルバムの全曲紹介は割愛させていただく。本当は全部していきたいが、ダラダラ書いてしまいそうなのでこのあたりにしておきたい。しかし、このアルバム自体18曲だが非常に短く感じる。それくらいテンポ良くリズミカルに音楽が展開していく。また、RancidのTimが作った曲も複数存在し、その息吹を感じることも出来る。結局具体的な内容にはあまり触れていないが、このアルバムの全体的な印象をご理解いただきたく、実際に手に取る、もしくはダウンロードして聞いてもらいたい。

私のブログは音楽に触れる「きっかけ」を作り出すために日々記している。今回の話でDANCE HALL CRASHERSの「The Old Record」を1回聞いてみようと思って頂ければこの上ない。