音楽好きの今の話と昔の話

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私的名盤考察「ORANGE SUNSHINE」

個人的に「これ」と思える名盤の話をしていきたい。考察なんて大それたタイトルをつけたが、さらっと目を通していただくだけでもありがたいのでよろしくお願いします。

初回である今回ピックアップしたのはJUDY&MARY(以下ジュディマリ)の2ndアルバム「ORANGE SUNSHINE」である。

 

 

何を今更かも知れないが、約30年前のこの1枚を現在の視点、つまり少し離れた時代から見えてくることを記事にしてみたい。そもそもなぜこの1枚なのか?その理由は、先日某中古店でいつものごとく中古CDを物色していた。するとジュディマリの初期3部作が並んでいることに気が付いた。そう言えばかつてカセットテープに録音して聞いていたが、CDでは持っていないと思い3枚とも中古コーナーの棚から引きずり出した。そしてかなりの時間聞いていないであろうこの2ndアルバムを聞いてみた。20年以上聞いていなかったこのアルバムだが、即座に「私的名盤」に選定しようと思った。バンドがブレイクしたきっかけとなった2ndだが、アルバムオリコンチャートで最高位が5位、と1位を取った訳でもない。しかし、その実績以上にこの1枚が多くの名曲と分岐点を生み出しているのだ。

まずは簡単に概要から。発売日は1994年12月1日でCDとMDでリリースされた。レコード会社がソニーということもあり、MD盤でもリリースされた貴重な時代の1枚だ。今作からギターのTAKUYAが複数の楽曲制作に参加した。ベースの恩田さんがメインで作成したパンク色強いインディーズミニアルバム「BE AMBITIOUS」や1stアルバム「J・A・M」とは少し毛色が異なる。

 

 

 

この2つのジャケットからも、明らかにパンキッシュなイメージから2ndではポップな雰囲気に変化している。このジャケットの分岐点があった2ndでは音楽性の変化も見られた。1stアルバムまでは荒々しさを前に出しながら、楽曲自体はどこか鬱蒼としている。「BLUE TEARS」「DAYDREAM」等もポップ曲に違いないが、どこか暗い。一転2ndでは「Hello! Orange Sunshine」のような明るく元気なイメージの曲をタイトルに持ってきた。曲もこれまでメインで作曲していた恩田さんの楽曲とTAKUYA作曲のポップな曲が順序良く並べられた。

  1. POPSTAR
    (作詞:YUKI 作曲:恩田快人
  2. どうしよう
    (作詞:YUKI 作曲:恩田快人
  3. Hello! Orange Sunshine
    (作詞:YUKI 作曲:恩田快人)
  4. RADIO
    (作詞:Tack and yukky作曲:TAKUYA)
  5. Cheese "PIZZA"
    (作詞:YUKI 作曲:TAKUYA)
  6. 小さな頃から
    (作詞:YUKI 作曲:恩田快人
  7. HYPER 90'S CHOCOLATE BOYFRIEND
    (作詞・作曲:TAKUYA)
  8. キケンな2人 (Let's Go! "DAIBUTSU" MIX)
    (作詞:Tack and yukky作曲:TAKUYA)
  9. クリスマス
    (作詞:YUKI 作曲:恩田快人
  10. 自転車
    (作詞:YUKI 作曲:恩田快人
  11. ダイナマイト
    (作詞:YUKI 作曲:恩田快人

こうやって並べてみるとまさに初期ジュディマリのベスト盤のような楽曲リストだ。TAKUYAが作曲に本格参戦とは言え11曲中4曲である。たまたまなのか意図的なのかわからないが、2人の作曲した楽曲が6曲目の「小さな頃から」を中心としてシンメトリー、左右対称の並びである。まだまだ恩田さんがメインと言った感じだが、TAKUYA作曲の楽曲の輝きは凄まじい。ジュディマリの音楽性の大きな転換期となった要因のひとつ「TAKUYAの台頭」である。

TAKUYA作曲の「RADIO」はギターが楽しい曲である。ボーカルとギターの掛け合いに徐々に現れてくるコーラスが脇を固める。突き抜けるようなボーカルメロディは、YUKIがラジオの電波のごとく空に向かって歌っている様が思い浮かぶ。歌詞にある"RADIO のボリュームを ちょっと あげて"の「ちょっと」の部分なんて非常にユニークな表現である。メロディラインも不思議だし、YUKIの節回しも独特でキュートである。このあたりはプロデューサー佐久間氏の技なのかはわからないが、シングルB面にしておくにはもったいない楽曲である。そして、この曲と「自転車」のコーラスワークが好きだ。当時としてもどこか古めかしいコーラスだが、思わず上を向いてしまいそうになるコーラスだ。

恩田さんも負けてはいない。ベースとしてパンクっぽいイメージを終盤まで続けているが元々メタル系のベーシストであった。そんな彼はロック曲をメインに作っていたがこのアルバムには「小さな頃から」と言うミディアムスローテンポの聞かせる名曲を残している。サビから始まるがAメロ?Bメロ?と大きく盛り上がりを見せぬままループさせる。何気にノスタルジックに深い楽曲だ。

そして私がジュディマリを語るうえで外せない名曲「Cheese "PIZZA"」について。この曲は2ndアルバムがリリースされる1ヶ月前にシングルとして発売された。作曲はTAKUYA。昔聞いてたときはスカっぽい曲だと思いながら聞いていたが、今聞くと全然違うことに気付いた。どこか南の方をイメージさせるアレンジと愛を誓い合うメロディは珠玉である。昔聞いてた当時どこか裸足の女神っぽいと思っていたはここだけの話だ。

YUKIは新しい形の女性ボーカル像を植え付けたと考えられる。それまではバンドの女性ボーカルと言えば気が強く尖った感じ、いわゆるヤンキーチックなイメージが強かった。しかし、YUKIは少し幼さを残した可愛らしい女の子が楽しそうに歌うイメージを作り出したように思う。

 

ギターのTAKUYAは当時ギターを始めた私にとって十分挫折させるテクニックであった。一生懸命練習してみたが一向に様にならない。確かに今聞いても面白いギターやってたんだなぁと強く感じる。

ドラムの五十嵐さんはそんな個性的な彼らの中でも堅実に感じる存在であった。YUKIと言うポップアイコン、その傍にユニークな若いギタリスト、そしてパンキッシュないでたちのリーダー的存在のベーシスト。兄貴分としてステージの後ろから見えた景色はどうだったのだろう。一度本音を聞いてみたい。

 

 

後の3rdアルバムに収録されている「Over Drive」や「ステレオ全開」。それらの曲のタイトル通りここがジュディマリの楽曲に対する感情のピークだと思えてしまう。あの乾いたギターの音から始まる「Over Drive」なんかは本当に名曲である。その後も「そばかす」「散歩道」や「クラシック」「ラッキープール」等いくつもヒット曲を生み出しているし、セールス(商業的)にも成功している。しかし個人的にはこの「Over Drive」あたりが「ザ・ジュディマリ」として最高の形を保っていたように感じてしまう。これは悪い訳でもないし、失敗だとか批判的な意味合いではないことを付け加えておく。とにかくジュディマリジュディマリたる所以を生み出したこのキラキラと輝くポップサウンドが光る2ndアルバムの功績は大きいと言うことを伝えたかった。

バブル崩壊は1991年と言われている。その後結成されたこのバンドは、景気の後退とは正反対にバンドとして右肩上がりに成長していった。途中充電期間を挟みながら2001年3月バンドは解散した。人気に翳りが見え始める前にバンドはステージから降りた。解散理由は様々なことが言われているが、ここでは関係ないと思っているので触れるつもりがなかったが少し。

 

 

「TAKUYAの台頭」が引き起こした結果だったのか。結局ラストアルバム「WARP」では恩田さんの作曲した曲は収録されていない。1996年頃を境にジュディマリのメインコンポーザーは切り替わっていった。今の時代、皆が思うジュディマリの代表曲「小さな頃から」「ドキドキ」「そばかす」は恩田さんの作曲。「Over Drive」「散歩道」「ラッキープール」はTAKUYA作曲だ。だが、すべて「JUDY&MARY」の名曲であることには変わりない。結果論ではあるが、このように振り返って見たとき、この2ndアルバムから何かが始まっていたことを感じてもらいたい。

私のブログは音楽に触れる「きっかけ」を作り出すために日々記している。今回の話でジュディマリの「ORANGE SUNSHINE」を1回聞いてみようと思って頂ければこの上ない。

 

Orange Sunshine

Orange Sunshine

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