音楽好きの今の話と昔の話

普段目についた音楽について何となく語ります。

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私的名盤考察「FACES PLACES」

さて、皆さんの「TK」こと小室哲哉さんの音楽と言えばTM NETWORKや90年代席巻した「小室ファミリー」をイメージされるかと思う。CDが一番売れた年は1998年と言われており、この年のシングル売上トップ10には小室ファミリーがいない。トップ10どころかトップ50にもほぼ見当たらない。しかしながら、ここまでCDが売れるようになったのは「小室哲哉」という結果があったからだと思う。実際1994年から1997年にかけての年間オリコンチャートは小室ファミリーだらけである。

なんとなくglobeネタが増えている。2025年にはデビュー30周年が待ち構えており、そこに向けてKEIKOさんが準備をしているという話も聞こえて来た。そんなことを意識してか、久しぶりにアルバムを聞いてみて気付かされることが多くあった。特に強く感じたのは2ndアルバム「FACES PLACES」を聞いたときのことだ。若い頃に聞いていた聞こえ方と明らかに違って聞こえた。正直なところ私の中でも最初のアルバム3部作の中でもこの2ndの評価は低かった。どうしても1st「globe」、3rd「Love again」のポップさに目を奪われてしまっていた。しかし、今回聞いたときにこのアルバムの重要性と「名盤」であるということに気付けた。現代から見えるこのアルバムの形を探ってみたい。今回も同様、名盤考察とは大それたものではないが、紐解いていければよいと思う。

 

 

まずは前後の流れを見てみたい。1st「globe」は少し前時代感を感じる音で構成されている。ユーロビート的な部分とTM NETWORKサウンドが交錯したような、「ピコピコ音」が強くポップでメロディアス。「Feel Like dance」や「SWEET PAIN」「DEPARTURES」など代表的なTKポップチューンが凝縮した一枚だ。しかし、2nd「FACES PLACES」は1年でかなり音楽性が変化していることに気付かされる。小室哲哉さんの進化の過程もしくは分岐点を感じる一枚と言っても過言ではない程、格段にスタイリッシュかつ多様性を持った作品となった。この背景にはニルヴァーナの存在がちらついており、アルバム全体のテーマは「ニルヴァーナ終結」「グランジの崩壊」なんてコンセプトのうえ作られた。小室哲哉作品の中でもロック色が強く、これまでのポップでスピーディなダンスチューンはなりを潜めている。シングル曲が含まれているにも関わらず、それらの雰囲気もどこか暗く感じてしまう。カートの影響が散りばめられている全体像から、まさかこれがTK作品とは感じられない。しかし、その衝動性はこの作品を小室哲哉史上最大に異彩を放っており、最高傑作のひとつとも言われている。そのまたちょうど1年後リリースされた3rd「Love again」にはいくらかその影響を残しながら、新しい形のTKサウンドを作り出している。この3枚で3部作として幾つかの秘密が散りばめられている。そのことはまた別の機会に記事に出来ればと思う。

ここからは具体的にCDについて見ていきたい。発売日は1997年3月12日。1st「globe」発売から丁度1年くらいでリリースされた。いつものように全曲を並べてみる。

1.「overdose」2:32
2.「DEGENERATE」4:48
3.「FACES PLACES」6:26
4.「Is this love」5:32
5.「So far away from home(Beautiful Journey)」5:29
6.「a temporary girl」7:14
7.「Because I LOVE the NIGHT」3:48
8.「Anytime smokin' cigarette」7:39
9.「Watch the movie?」5:03
10.「a picture on my mind」5:45
11.「FACE」6:20
12.「Can't Stop Fallin' in Love」5:03
13.「can't stop PIANO SOLO」1:03
14.「FACES PLACES (REMIX)」(Remixed by EDDIE DELENA)

並べて気付くことは全部英語タイトル。7分を超える曲が2つある。そんなところだろうか。

FACES PLACES」は狂気じみた名曲だ。主題となるメロディとリズムのイントロから始まる曲だが、どこをサビととるか。この曲はイントロ「ピピッピ ピッ…ピ」のリズムが最後まで片隅で聞こえたまま、様々な「顔」を出してくる。当時はKEIKOさんが死力を振り絞って高音を歌いきる部分だけの印象が強かったが、今聞いてみると小室哲哉さんなりのロックサウンドだったのか。KEIKOさんが自らの魂を削り取るように歌う様はTKロックもしくはTKグランジを見せたかったのかも知れないと勝手に妄想してしまう。

 

 

その他にもこのタイトル曲「FACES PLACES」は深掘りする要素が詰まっている。歌詞の中にある年代。「1970」「1981」「1984」「1994」「1997」と5つの年が出てくる。リリース当時何か意味があるに違いないと思ったが、ネットが当たり前にある時代ではなかったので調べようもなかった。謎に包まれたままだったが、紐解いてくれていた。Wikipediaからの情報だが、そのまま引用したい。

歌詞中に出てくる年号(1970年、1981年、1984年、1994年、1997年)について小室は2015年にTwitterで「全部僕の大事な年号」と発言している。 その後インタビューで「大事な」理由を発言した。

1970年 - 大阪万博冨田勲シンセサイザー・マルチモニターの存在を知る)。
1981年 - SPEEDWAYに加入。
1984年 - TM NETWORKデビュー。
1994年 - TMN活動終了。自分のプロデュースワークの始まり。
1997年 - 精神的なスイッチングの年

FACES PLACES - Wikipediaより

小室哲哉さん自身の分岐点というのが見て取れる。最後の1997年にこの曲はリリースされているので、メンタルに大きな変化があった年なのだろう。今でこそ何があったかわかるが、1997年は「TK」の潮目が大きく変わった年だ。「脱TK」の動きが強まり、いわゆる「小室ファミリー」がこの年から変化・縮小していく。この様を予測していたかのような「精神的スイッチング」だったのか。

その他にこのアルバムにも収録されている「FACE」との関連性である。同じような時期にリリースされ、似たようなタイトル。意識していたと思わせるような歌詞は気付きにくいが、「FACE」の内面の葛藤に対して「FACES PLACES」は外との軋轢を語っている。外から何を言われようが私は私、だけどそんな私の中にあるもうひとりの鏡に映ったあなたとの対話。深読みするとかなり深い歌詞を作っている小室哲哉さんは歌詞もかなり秀逸である。小室ファミリーという華やかなメロディだけではない、独特の世界観の歌詞は他の作品でも注目してみると面白い。

その他の曲にも少しだけ目を向けてみたい。「Anytime smokin' cigarette」を聞いていると200円ちょっとというフレーズが時代を感じさせる。タバコは今では千円札1枚で2個も買えない世の中になってしまった。

シングルでヒットした「Can't Stop Fallin' in Love」も少し面白い趣向となっている。シングルとアルバムではアレンジ違いというのはよくある話で、ここでもイントロから異なっている。シングルは小室さんの伴奏から始まるが、アルバムはいきなりKEIKOさんの歌い出しから始まる。また、最後のサビのところだが、シングルとアルバムでは違うところで歌詞を区切っている。この最後のところの意図は未だにわからないが、当時からずっと気になっている箇所だ。こういったことがあるからシングルとアルバム両方聞きたくなるのだ。

 

globeは15年以上活動休止状態ではあるものの解散していないし、むしろここ最近のKEIKOさんの様子を見る限り、回復具合では再始動の向きがある。冒頭でも話したが、2025年はデビュー30年ということもあり、そこに向けて準備は進んでいるという話もある。是非「FACES PLACES」の歌詞のように"one more song 愛を聴かせて"欲しい。

私のブログは音楽に触れる「きっかけ」を作り出すために日々記している。今回の話でglobeの「FACES PLACES」を1回聞いてみようと思って頂ければこの上ない。