音楽好きの今の話と昔の話

普段目についた音楽について何となく語ります。

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行けなかったあのホールへ。「3曲」の映像と「3」の魔術が補完する、椎名林檎【党大会】の絶対的安定感

人間には「行きたくても行けなかったライブ」が、人生の数だけ存在する。チケット抽選の落選、急な残業、あるいは単に出遅れた後悔。あの日、あのホールで鳴っていたはずの音に想いを馳せ、人は胸を痛める。だが、現代は良い時代だ。YouTubeという文明の利器を開けば、その熱狂の「一端」だけは、いつでも手元に手繰り寄せることができるのだから。

今春開催された【椎名林檎 党大会 令和八年列島巡回】。13年ぶりとなる「党大会」の看板、そして厳選された極上の響きを誇るホール群。そこに集いしは、石若駿、鳥越啓介、名越由貴夫、林正樹という鉄壁の陣容に、村田陽一率いるホーンセクション、さらに吉田宇宙カルテット。この最高峰の極道(プロフェッショナル)たちが織りなす空間に行けなかった痛恨を、一体どう埋めればいいのか。その答えのように、突如YouTubeへ投下された3つの映像。「カプチーノ」「至宝」「SI・GE・KI」。

……それにしても、なぜ「3」なのだろうか。

古来より「3」という数字は、我々の世界を妙に魅了してきた。

「石の上にも三年」と言い、「三人寄れば文殊の知恵」と称え、早起きすれば「三文の得」があるという。物語に目を向ければ『三匹の子ブタ』の末っ子は頑丈な家を建て、『三銃士』は絆を誓う。物理の世界では「3点」こそが最も安定した基盤(三脚)を作り、東洋の思想において奇数は縁起が良く、我々は「七五三」で子の成長を祝うのだ。

そう、あのプロレス界の至宝・アントニオ猪木だって、「1、2、3、ダァーッ!」と「3」のカウントで世界中の心を鷲掴みにしたではないか。数字の「3」とは、混沌とした現実に奇跡的な「安定」と「熱狂」をもたらす、極めて魔術的な数字なのだ。

今回公開された3曲もまさにそれだ。甘く苦い戯れを極上のアンサンブルで魅せる「カプチーノ」。気高く静謐な気品がホールを支配する「至宝」。そして観客の神経を心地よく焼き切る「SI・GE・KI」。

この3曲が揃った瞬間、画面越しでありながら、我々の眼前には不可視の「絶対的安定感(三脚)」が立ち現れる。たった3曲。されど、この「3」という三次元の立体空間によって、行けなかったはずの「党大会」の全貌が、我々の脳内に鮮烈に補完されてしまうのだ。YouTubeが提示した「3」の魔術に、我々はまんまと平伏するしかない。

だが、これで満足して終わると思うなかれ。この3曲は単なる救済ではなく、我々をさらなる深みへ引きずり込むための、緻密に計算された最高峰の「プロパガンダ」なのだから。

2026年10月28日、この極上の夜を完璧な音響と映像でパッケージングした映像作品(Blu-ray/DVD)の発売が決定している。初回限定盤には重厚な三方背ケースに44ページもの豪華ブックレット、さらにはスマホやタブレットで手軽に映像を楽しめる「NeSTREAM LIVE」のシリアルコードまで同梱。音響面でもステレオに加え立体音響のドルビーアトモスに対応しており、自宅の部屋がそのままあの極上のホールへと変貌を遂げる。まさにあの「党大会」の空気感を隅々までコンプリートできる決定版だ。

それだけではない。この映像作品の予約購入者には、10月30日から開幕する全国ホールツアー【椎名林檎と彼奴等と試す煩悩菩提】のチケット先行抽選に申し込める“お楽しみシリアルナンバー”が付与されるという。

「行けなかったあの日」の痛みを「3」の映像で癒やされた我々は、その最高峰の映像作品を手に入れると同時に、気づけば次の現場へ向かうためのチケットを求めている。「3」の次に来るのは、言わずもがな「4」度目となる“彼奴等”ツアーへの招待状だ。

人は去ったライブを悼み、YouTubeの「3曲」に救われ、映像作品の圧倒的な熱量に酔いしれ、そして再び次の狂乱へと導かれていく。今夜も画面の向こう、3つの映像が放つ光に打たれながら、10月のリリースと次の旅の準備を始めるとしよう。今回公開された3曲「カプチーノ」「至宝」「SI・GE・KI」を一気にご一聴。