「芒に月」、「ススキにツキ」と読む。花札の8月札にあたり、重要な札のひとつである。個人的にも好きな札だ。
このたびの椎名林檎さんの新作のタイトルでもある。花札の8月といっても旧暦にあたるため9月から10月にあたるだろうか。なぜこの6月25日という梅雨真っ只中にリリースされたのだろうと思い耽ってしまった。
今回の楽曲はNHKのドラマ「ひとりでしにたい」のタイアップ曲となっている。同タイトルの漫画が原作の終活をテーマとした内容となっていて、重そうな内容だがコメディタッチに描かれている。そんなドラマの主題歌「芒に月」は作詞・椎名林檎、作曲・ 伊澤一葉と東京事変コンビ。元々伊澤一葉さんのバンド 「APPA」で持っていた原案をベースに作られたのが今回の楽曲だといわれている。
MVの内容のネタバレを少ししてしまう。とにかく椎名林檎さんはほぼ出てこない。最初と最後だけ。ほぼダンサーのAyaSatoさんがメインの劇場スタイルのMV。椎名林檎さん当人は主役は私だけどと言わんばかりに登場してあっさりと締める。しかしながら、決してMVのダンサーたちも完全に主役である。不思議な構成で呆気に取られながらも興味深いサウンドが耳に残る。少し古風でノスタルジックな雰囲気の音は何故かジャジーでもクラシカルでもない。その渋い楽曲は、銀色の穂が揺らぐ様のようだ。伊澤一葉さんの鍵盤の世界から飛び出した楽曲は、まさに「芒に月」をイメージさせてくれる。MVのダンサーたちも山に群生した一面のススキのごとく鮮やかで、いつまでみていても飽きない。
やっぱり椎名林檎さんの話は触れておかねばならないと思いながらブログを書いた。話が尽きないがそろそろ終わりにしたい。今回の楽曲はシングルとしてリリースされたが、カップリングの曲名も同じく花札繋がり「松に鶴」。作詞・椎名林檎、作曲・ 伊澤一葉と同じく東京事変コンビ。関門海峡あたりの妖気を嗅ぎ取ろうとする椎名林檎さんをご一聴。